2014年12月12日 四季の花づくり

土の機能回復に「天地返し」                 早川京子  

 1月の作業はあまり多くありません。水やりと空いた花壇の土の天地返しぐらいです。  
 草花が育つのに、土は最大の要素です。伸びる草花の茎を支えるためにも大いに役割を果たすのですが、それよりも重要なのは、水や栄養素を蓄えて、草花の生育、開花を進めるのを支える働きです。命を支えているわけです。この機能を良くしてやるために行うのが天地返しです。  
 この重要な働きを持つ土も、肥料を加えて、われわれ人間が望む量の草花を育てようとすると、その大切な能力がだんだん衰えていきます。土が固く締まって、栄養素や水を蓄えてくれる隙間がなくなってくるのです。草花が生育するためには、根が十分に呼吸できることがまず大切で、これができると、根の生育が良くなり、水や栄養素をよく吸い上げられるようになります。  
 草花の命を支える重要な働きですから、失われたり減少したりした機能の回復には、少々きつい作業が必要になります。それが、天地返しという、深い所にある土を表面に出し、表面の土を裏返して下層にしてやる作業です。天地返しは深いほどいいのですが、30cmくらいの深さにやりたいものです。  
 この作業を冬の間にやっておき、風雨にさらし、さらに凍るような状態にしておくと、硬くなった土塊がほどよく、バラバラに砕かれ、空気や水を含みやすい、ふっくらした土に変わります。園芸書などに、栽培に理想的な土として、「空気を多く含み、水持ちが良く、排水の良い土」という矛盾したような表現がありますが、天地返しをしてやることで、そんな状態の土にできるのです。この作業をしておくことで、小さな粒の塊ができ、それが積み重なった状態を作り、水持ちの良さと空気の入り込みを良くする機能が併存するようになるわけです。(この記事は「JA広報通信」に掲載されたものです)